世界初!カーボンナノチューブ電極を用いた有機薄膜太陽電池の実証実験を行います

[2024年12月6日]
 Osaka Metro は、名古屋大学と共同で、森之宮の「e METRO MOBILITY TOWN」において、次世代太陽電池であるカーボンナノチューブ電極を用いた有機薄膜太陽電池(CNT-OPV)の実証実験を行います。
 カーボンナノチューブ電極を用いた次世代太陽電池の実証実験は世界初となります。
 現在普及している太陽光パネル(シリコン太陽電池)は、重量が重く老朽化している建物の屋根上には設置できないなどの課題があります。CNT-OPVは、軽量でフレキシブルであり、こうしたパネルが開発されると、建物を補強することなくパネルが設置できるほか、建物の屋根以外にも壁面など従来では困難だった場所にも設置でき、再生可能エネルギー化の推進につながります。また、CNT-OPVは、両面から発電でき、窓面に設置することで、外は太陽光、内は室内の蛍光灯と、用途が広がることから、自動車やバスなどの輸送機器への搭載を目指します。

【実証実験について】
名古屋大学大学院工学研究科および未来社会創造機構マテリアルイノベーション研究所の松尾 豊 教授、大島 久純 特任教授らの研究グループは、次世代太陽電池として実用化が期待される有機薄膜太陽電池※1の裏面電極※2にカーボンナノチューブ※3薄膜透明電極を適用し、10センチメートル角(100平方センチメートル)のCNT-OPVセミモジュール※4を作製することを可能にしました。(写真1)
CNT-OPVの優れた耐久性を実証するため、フレキシブルなフィルム型の10センチメートル角(100平方センチメートル)CNT-OPVセミモジュールを30枚作製し、Osaka Metro と共同で実証実験を開始します。
森之宮の「e METRO MOBILITY TOWN」のミライ体験エリアに展示した車両の窓枠にCNT-OPVセミモジュールを取り付け、データロガーで発電量などを記録し、耐久性などを試験します。

〇実証実験期間
2024年12月6日(金曜日)から2025年10月下旬
〇実証実験場所
森之宮 e METRO MOBILITY TOWN ミライ体験エリア展示車両(写真2から4)

  • (写真1)10センチメートル角CNT-OPVセミモジュール
  • (写真2)実証実験を行う展示車両外観

  • (写真3)展示車両に取り付けたCNT-OPV(外側)
  • (写真4)展示車両に取り付けたCNT-OPV(客室側)


【CNT-OPVについて】
カーボンナノチューブ(CNT)は、我が国の研究者により発見された、炭素原子でできた筒状の物質です。炭素でできているため、原料や資源に制限はなく、軽量で、機械的および化学的安定性に優れています。CNTを薄い膜に形成することで、光を通し、導電性がある太陽電池に用いられるフレキシブルな透明電極を作ることができます。
有機薄膜太陽電池(OPV)は、ペロブスカイト太陽電池※5とともに次世代太陽電池のひとつであり、発電材料に有機半導体※6を用いています。OPVは軽量でフレキシブルであり、ペロブスカイト太陽電池と比較してエネルギー変換効率がやや劣るものの、耐久性が高いことが知られています。
CNTは酸化されないため、裏面電極に銀を用いた従来の有機薄膜太陽電池モジュールと比較し、耐久性が格段に向上します。また、銀とは異なり透明な膜を形成できるため、両面受光型の透光性のあるCNT-OPVモジュールを作製できます。

【実証実験の意義】
CNT-OPVはフレキシブルで軽量であるばかりでなく、透光性があり両面受光が可能で意匠性に優れ、シリコン太陽電池との差別化が図りやすい太陽電池です。
現在開発されている次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」は、シリコン太陽電池と比較して耐久性に懸念があります。その問題を大きく改善するCNT薄膜透明電極は次世代太陽電池の実用化に向けてゲームチェンジャーになる可能性をもっています。
新たな太陽電池についての実証実験を名古屋大学と共同で行うことで、脱炭素社会に向け、社内施設でより多くの太陽光エネルギーの活用や、自然に負荷をかけない再生可能エネルギーの開発、エネルギーデバイスの産業化などの促進を図っていきたいと考えています。

〇研究グループ
名古屋大学大学院工学研究科および未来社会創造機構マテリアルイノベーション研究所
デザインソーラー株式会社
株式会社デンソー

【用語説明】
※1 有機薄膜太陽電池
発電層に有機半導体材料を用いた太陽電池で、軽量・柔軟な特性をもち、製造コストが低いことが特徴。多様な基板に対応可能で、次世代の再生可能エネルギー源として注目されている。

※2 裏面電極
太陽電池や電子デバイスの裏側に配置される電極で、発電層で発生した電流を収集する。安定性や電気伝導性、コスト優位性などが求められ、金属や炭素材料などが使用される。

※3 カーボンナノチューブ
炭素でできた直径1から2ナノメートルの筒状の材料。(1ナノメートル:1ミリメートルの100万分の1)
炭素原子が六角形格子を形成して筒状になった構造をもち、優れた電気伝導性、強度、熱伝導性をもつ。電子デバイスやエネルギー材料、バイオ医療など幅広い分野で応用が期待されている。

※4 セミモジュール
数個から数十個の太陽電池セルを直列につなぎ組み込んだものをモジュールという。小型のモジュールをセミモジュールという。研究段階では一つのセルでの発電効率が評価されるが、実用化段階においてはモジュールで評価される。

※5 ペロブスカイト太陽電池
「ペロブスカイト構造」という特殊な結晶構造をした有機無機ハイブリッド材料を発電層に用いた太陽電池。高効率かつ低コストで製造可能なため、従来のシリコン太陽電池に代わる次世代の太陽電池として注目されている。

※6 有機半導体
炭素を主成分とする有機分子や高分子からなる半導体材料。その軽量・柔軟な薄膜は、印刷技術による製造が可能なため、有機ELや有機太陽電池、トランジスタなどの分野で注目されている。

※本件は、当社グループが掲げるSDGsの推進に関する取組みの、下記に基づく内容になります。

移動手段の変革

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